はじめに
日常のふとした瞬間に「日本人は冷たいのではないか?」「他人に厳しすぎないか?」と感じることはありませんか? そのくせ「日本人は世界中から好かれている、または尊敬されている」とか人の目を気にするテレビ番組を見かけたりします。(具体的にどの番組とは言いませんが),,, 私が南米旅行から帰ってきて、感傷的になっているからでしょうか?
上記のようなツイートをしながら、「あれ、、、日本人に比べてブラジル人のほうが性格いいんじゃね?日本人って、、、どうなの?」みたいな感覚に襲われました。(反対意見がある方すいません、でも私がそう思ってしまったのだから仕方ないです)
とはいえ、私も昔から「日本人は集団行動が好きで意地悪だ」といった話をよく耳にしていました。しかし、正直なところ「それって主観的な印象論じゃないの?何か明確な証拠や論文の根拠がないなら、あんまり意味がないよね」と疑問に思っていました。結局のところ、私の上記のツイートなんて個人的な感情なので、日本人よりブラジル人のほうが性格いいなんて証明にはならないと思います。
アメリカだって同調圧力あるじゃないか
実際、個人の意見や口コミというのはあまりアテになりません。例えば、アメリカで在米5年目の大工として暮らすYouTuberの「地獄海外難民ch」さんが投稿した動画『在米5年目が苦しむアメリカの絶望的な同調圧力』の中でも語られているように、一般的に「自由で個性が尊重される」と思われがちなアメリカでも、「男は男らしくあるべき(有害な男らしさ/Toxic Masculinity)」という強烈な規範があり、マニュアル車が運転できないだけで失笑されたり、薄着でないとバカにされたりする厳しさがリアルに語られています。
【参考動画】地獄海外難民ch 在米5年目が苦しむアメリカの絶望的な同調圧力(https://www.youtube.com/watch?v=wgE_WG0Xlno) ※アメリカでも「男性像」から逸脱した行動をとると厳しい周囲の視線やいじりが飛ぶ現実が、実際の生活体験として生々しく紹介されています。個人的には好きなYOUTUBERですが、どうもショート動画の「絶望する、、、、」というラストがあまりにも印象的すぎて、好き嫌いが分かれるらしいです。
このように、「海外は自由で日本人は意地悪」といった個人の主観ベースの議論は往々にして不正確です。だからこそ、印象論ではなく「行動経済学や実験社会科学の研究論文で証明されている客観的なデータ」を見ていく必要があると思います。
では、客観的な研究データから見たとき、日本人は本当に性格が悪い(他人に厳しい)のか?そして意地悪だったりするのか という問いに答えていきましょう。
実験で検証する「日本人の厳しさ」:公共財ゲームとは?
行動経済学の分野では、集団における人間の協力や攻撃性を測るために「公共財ゲーム(Public Goods Game)」という手法がよく用いられます。
【基本ルール】 ・複数人のグループを作り、全員に同額(例:1,000円)を与える。 ・手持ちの中から「共有のポット(公共財)」にいくら投資するか各自が秘密裏に決める(残りは自分の手元に残す)。 ・共有ポットのお金は1.5〜2倍に増やされ、投資した金額に関わらず全員に均等分配される。

全員が全額出せば全員が得をしますが、自分は1円も出さずに他人の作った成果だけを受け取る「フリーライダー(タダ乗り)」が出ると、真面目に投資した人が大損します。そのため、何度も繰り返すと全員が投資をやめ、社会の協力関係が崩壊していくのがこのゲームの典型的なプロセスです。
実際これから紹介する論文ではルールはもと細かいのですが、単純化すると上記のようになります。
日本人は「いじわる」なのか?日米比較実験で出た驚きの数値
この論文は公共財供給実験における自発的参加とスパイト(制裁的行動):国際比較 という形でまとめられています。著者は複数おられるのでまとめておきます
| 項目 | 英語 | 日本語 |
| 論文名 | Voluntary Participation and Spite in Public Good Provision Experiments: An International Comparison | 公共財供給実験における自発的参加とスパイト(制裁的行動):国際比較 |
| 著者1 | Timothy N. Cason | ティモシー・N・ケイソン |
| 著者2 | Tatsuyoshi Saijo | 西條 辰義(さいじょう たつよし) |
| 著者3 | Takehiko Yamato | 大和 武彦(やまと たけひこ) |
また、この論文をすべて説明するわけにはいかないので、実験と評価についてまとめておきます
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 被験者数 | 計100名(日本60名、アメリカ40名。各セッション20名) |
| 実験方法 | 2人1組による2段階の自発的公共財供給ゲーム。 |
| 期間・ペア設定 | 全19期(練習4期、本番15期)。毎期ランダムにペアを変更し、同じ相手とは原則再度組まれないストレンジャー・デザインを採用。 |
| 第1段階 | 公共財供給への参加・不参加を同時に決定。 |
| 第2段階 | 参加者は相手の参加状況を確認後、初期保有24単位から0~24単位を投資。 |
| 評価方法 | ①参加率 ②平均投資額 ③全体の効率性(理論上の最大利益に対する実際の利益割合)を用いて日米の違いを統計的に比較。 |
この記事では、日本人とアメリカ人がどのような投資行動をとったのかのみに焦点を当てることにします。
この論文について
この論文は実はダウンロードできます。https://docs.lib.purdue.edu/ciberwp/139/?utm_source=chatgpt.com
にアクセスしていただきまして、右側の青いダウンロードボタンを押すとPDFを閲覧できます

このPDFは文字検索できるようになっていますので便利ですね。いい時代になったものです
自分が損をしてでも相手の足を引っ張る割合(スパイト行動)
本論文の “Spiteful behavior”において、自分が1人だけお金を出して損をしてしまった初期段階で、自分の手持ちを減らしてでも他者の利益を削り落とす行動(Spiteful punishment / 減益行動)を選択した被験者の割合が具体的に提示されています。

論文の内容は全ては説明しませんが、利益の最大化行動となる投資額が11とするとわかりやすいです。
下記にあるように、6や7しか投資しなかったら、ちょっと意地悪な行動(スパイト行動)とみなします
論文を全部読むのは時間がかかるので、エッセンスだけ引用します。
英文(論文から引用)
“If one subject participates in the mechanism and the other does not, then the participant maximizes her payoff at yi = 11 and earns 2658.”
日本語訳
「一方の被験者だけがこのメカニズムに参加し、もう一方が参加しない場合、参加者は投資額を yi = 11 とすることで自らの利得を最大化し、その利得は 2658 になる。」
ということです。つまり、利益が最大化する投資額が11となります。
となると、この論文では6もしくは7を選んだらスパイト行動とみなしているので、それを単純に比較してみましょう。(投資額11未満を選んだら、すべてスパイト行動とみなすのは極端だと思いました)
それだとしても下記のように倍以上違いますね。
7型スパイト行動(6–7投資)の比較
| 国 | 総ケース数 | 6–7投資の割合 | 概算回数 |
| 日本 | 136 | 26% | 約35回 |
| アメリカ | 122 | 13% | 約16回 |
つまり、アメリカより日本のほうが、スパイト行動を起こす割合が倍以上であると、、、、、投資額11未満を全部抜き出したら、もっと顕著になるので、この程度にさせてください。。。。。非常に残念な結果です。
一見すると「日本人はやっぱり性格が悪いのか?」と思えるデータですが、日本人は、ルールを守らない人に対して制裁を加える(ペナルティを与える)ことで、集団の秩序を保とうとする意識が強いところがあるのではないでしょうか? 日本におけるコロナの時の「マスク警察」にあるように、、それ自体は人を咎めるようなことがあっても全体的な利益に繋がるかもしれない(私はマスク警察に対してはちょっとネガティブな印象がありますが)というところも否定できないところです。
あと炎上覚悟のコメントや動画もそうですね。炎上を狙って、人を傷つけたりするのは論外ですが、あえて、社会の悪い部分を批判するというのはジャーナリズムの根幹ではあるしそれを否定しては言論の自由は保たれないと思います。

私はこの論文の結論としては、日本社会では公平性維持のための制裁意識が強く働く可能性があるという程度にとどめておき、日本人が性格が悪いというような100%ネガティブな捉え方をしていません。
もしかしたら日本という島国の影響があるかもしれないですし、アメリカのような多民族国家ではないので、その点も考慮する必要があるのかなと感じました。
最後に
もちろん上記の正義感云々というのは私の解釈で論文にはそのようなことは書いてありません。正直なところ、この論文の中身を見て、私の中では残念な気持ちが70%くらいです。ただ、ただこの論文結果を否定的なところばかり見るというのは違うのではないでしょうか?
こういうある意味お仕置きをするという正義感というものが安心感につながるというのが日本の社会の良いところでもあるのかと思います。この論文をすべて吟味してすべての人に理解できるように細部までご説明するのは難しいところですので、続編をいつかは書こうと思っています。
本記事がお役に立てて、皆様も論文をダウンロードしてお読みになったら感想をお聞かせいただければと思います